中学2年生の夏休みの出来事
それは、私が中学2年生の夏休みの出来事です。
そのころ、私は英語が苦手だったので、英語の塾に通っていました。
塾と言っても個人の家で開いているこじんまりとしたもので、大学生のお姉さんが先生として英語の授業の予習復習を見てくれました。私のほかにも同級生が3人通っていました。
夏休みになると、塾を開いている家がリフォームすることになりました。そこで、夏休みの間は大学生の先生のお宅で授業を受けることになりました。
先生の家は古い歴史のある家でとても立派でした。私たちは先生の家の客間で勉強をすることになりました。
でも、そのお部屋に入った瞬間どこからかひんやりする空気を感じました。
私はその冷たい空気がどこからきているのかよくわかりませんでした。
”クーラーがよく聞いているのかな”くらいに思っていました。
私は少し寒いくらいでしたが、勉強をするためにみんなでテーブルについて準備をしました。
勉強が始まってしばらくすると、なんだか妙な違和感を感じました。
誰かが見ている、見られている。そんな視線を感じました。
先生かな?と思いましたが、先生は教科書を読んでくれていました。
同級生かな?と思いましたが、みんな先生の方を見るか、教科書を見ていました。
なんとなく嫌な予感がしました、目線を感じる先を追ってみると・・・先生が教科書を読んでいる背後に床の間があって、そこから鋭い視線を感じるのです。
客室の床の間には3~4歳くらいの女の子が描かれた童の絵が飾られていました。
その女の子の童がこちらをず~っと見ているのです。
ひんやりした冷たい空気もこの童から漂っているように感じました。
そういえば、先生が少し前に
「最近ご近所の人の家の蔵を大掃除するからって言って、倉も中にあるものを預かることになったんだよ。
その中に女の子の掛け軸があってね、しばらく飾っておくことになったのよ~」
みたいな話をされていたのを思い出しました。
この子だ!!こっちを見ている。
女の子の絵
掛け軸には3~4歳くらいの女の子が薄墨の水墨画風に描かれていました。
切れ長の目が何とも言えない雰囲気を出していて、勉強に集中できませんでした。
そして、教科書を読んでいた先生が急に「ゴホゴホ」咳をし始め咳が止まらなくなりました。先生は少しお水を飲んで落ち着きました。
床の間の絵の方を見ると、女の子が先生の方を見て「ニヤリ」と笑ったような気がしました。私は背中がゾ~ッとするようなものを感じました。
そのあと先生は顔色が体調がすぐれない様子で、無理しながら勉強を進めていました。
客間に入るまでは、元気で顔色が良く、咳なんてしなかった先生でしたが、この部屋に入って数分のうちに顔色が悪くなり咳をし始め、急に体調が悪くなっていきました。
先生の体調が回復しないので、その日の勉強は早めに終わりました。
でも、この掛け軸の影響はこれだけでは終わりませんでした。
絵から出歩く女の子
次の週も先生の家で勉強を見てもらいました。
先生は相変わらず顔色が悪いまま、少しやつれた感じになっていました。
同級生たちも先生の様子が気になっていたので、みんなで何かあったのか聞いてみました。
すると先生から意外な返事が返ってきました。
「あのね、実はさいきん夜眠れないの。
寝ようとすると体が動かなくなって、金縛りみたいになるの。
それがね、毎回必ず足の方から小さな女の子が這い上がってくるみたいな感じがしてね。息も苦しくなってすっごく重たいの」
先生がそう話していた時に、例の女の子の絵が「ニタ~」っと笑っていたように見えました。
私は怖くなってしまいました。
「そういえば、うちのお父さんも仕事中にケガをしちゃって、今大変だんだよね。
お母さんも、ここ数日風邪気味みたいだし、みんなどうしちゃったのかな?」
今度は女の子の絵が「ケタケタケタ・・・」と音をたてて笑っていたように感じました。
同級生の子たちも女の子の絵から不気味なものを感じたらしく
「先生、あの絵ちょっと怖い気がする」
「私も、あの絵から変な感じがしてたよ」
「ひょっとして、あの女の子が金縛りの原因かも?」
「女の子さっきからこっち見ているよ~」
とそれぞれ思ったいたことを先生に伝えました。
先生はそこで気が付いたらしく
「そういえば、あの絵が家に来てか金縛りが起きてるんだよね。
金縛りのとき、小さな女の子の気配がしていたし、怖くて見ていないけどなんとなく雰囲気が似ているかも」
先生はそのことをお父さんに相談されていました。
そして、女の子の童の掛け軸をお寺に持っていくことになりました。
掛け軸をお寺に預けて、供養してもらったそうです。
その後、先生の金縛りもなくなり、先生の家族に起きていた様々なトラブルも改善されたそうです。