CATNAP STATION🐾夢を使った次元旅行🐈

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夏目たまさぶ石の夢十夜~第一夜の前編~

こんな夢を見た。
腕組をして枕元に坐すわっていると、仰向あおむきに寝た男が静かな声で「おやすみ、また明日」という。

女は驚く、いつも口を開けば「死にたい・死にたい、俺はもう終わった」というのに、この日ばかりは妙におとなしい。
男が青白い顔をしておとなしく眠りに就くときは、いつもろくなことが起こらない。
「男は何かをしでかす気だ」女は直感的にそう思った。

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しかし、女には男の本心を探る勇気がない、問い詰めたところでかえってくる答えは見当がついている。

そろそろ実行するのか?女は男の寝顔を見つめながら心の中でそうつぶやく。実行するなら私も連れて行ってほしい。そう願い込めて男の目元を見つめる。

男は女の視線を感じながら、眠ったふりをする。男には計画があった、そしてその計画は誰にも伝える気がなかった、もちろん隣にいる女にも。
男は女の射るような視線を感じながらも、眠ったふりをした。最後の夜だ。この町も、この小さな部屋も、男のろくでもない人生も、重たいからだとの付き合いも明日で終わる。静かに最後の夜を感じていた。


女は男の無言の態度を見て、男が一人で去るのだと感じた。
「一緒に連れて行って」と声に出したかった。でも、のどが詰まって声にならなかった。
閉じたままの男の目元から、強い意思がにじみ出ていて女が声を出すことを許さなかったのだ。

女は男から拒絶されたことを感じ、胸が痛くなる。
痛みをこらえるために、男の冷たい手をにぎる。かさかさと乾燥してやや冷たい、節くれだった手だ。


女が手をにぎっても、男は振り払うこともなくされるがままになっていた。
女は絶望を感じた、手をにぎり返す気持ちも、振り払う感情もないのだ。このまま時が止まって明日が来なければいいのに・・・女はそう思った。思いながら熱い涙が両頬を流れるのを感じた。


どれくらいそうしていたのだろう?気が付くと男の手をにぎったまま、女は眠ってしまった。目が覚めると男の姿はない。
女はハッとする、嫌な胸騒ぎがして、息が苦しくなる。体の半分がなくなったような感覚に襲われると同時に、世界の色がなくなりすべてが白黒に見えた。
男の姿が見えないというだけで、世界はこんなに薄暗く、空気の薄いものだったのか?

女は男の行方を捜した。電話をしたがもちろんつながらない。男の知り合いに連絡をするが行方を知る人もいない。
女は男が二度と帰らないことを直感的にわかっているが、感情や思考がそれを受け入れない。何とか手を尽くしてつながりを持とうとしていた。

探せば探すほど絶望感が深くなる、男がこの地上にいないことをに匂わせる手がかりばかりが見つかる。

3日のあいだ男の行方を探し回った女は探すことをあきらめ、待つことにした。
こみ上げる絶望感や孤独感、不安を打ち消すように「もしかしたら、かえってくるかもしれない」と自分に言い聞かせていた。女は”男が帰ってる”と信じることでぎりぎりの状態で精神を保っていた。


男が姿を消して10日ほど過ぎたある日、警察から連絡が来た。女が住む町からはるか遠い南の土地で男は最期を遂げていた。

女は連絡を受けた後、体の全身から力が抜けてその場に崩れ落ちた。灰色がかった視界が真っ暗になり何も見えなくなっていた。
意識を失いながら、女は自分を置き去りにした男を恨んでいた。
真っ暗なこの地上において、男と女はお互いにとって唯一の光であり、ぬくもりであったはずなのに、どうして置いていくのか?
一人で去っていった男の身勝手を憎んでいた。