CATNAP STATION🐾夢を使った次元旅行🐈

愛知県でQHHTというヒプノセラピーを行っています😺どうぞよろしくお願いいたします🐾

シャドウに関する自己開示「シャドウの箱」を開封してみた~闇ショートストリー~

「家」という毒の沼~サビアン創作寓話(2019年12月6日金曜日)リライト


この話をするのはもっと先のほうが良いと思っていた。もしくは、一生誰にも話すことなく墓場まで持っていき、終わりにしても良いと思っていた。

この話は、どこの家庭でもあるような陳腐な出来事だ。しかし、狂気じみた瘴気まみれの事件でもある。

 

彼女が私に対して重い口を開いてくれてのは、過去の経験を伝えることで思い記憶の重力を手放すためであった。
因果の鎖に縛られたような過去を手放して、感情が持つ面倒な重さから逃れるのだろう。
彼女を縛る鎖を断ち切るために、過去を自分と切り離し、客観的に見つめようとした。

自己憐憫とか悲劇に酔っているわけではない。
闇に光を当て影を理解し、分析するという名の切り離し作業だ。

 

ある人が「水が持つくっついて同化する性質から逃れるには、逃げ続けるしかない」と言っていた。
その言葉に勇気をもらい、彼女は水の重さから逃れるために、これまで体験したことを話してくれた。

f:id:tamasabu117:20210831145623j:plain

 

遠い遠い日の思い出・・・
彼女は物心ついたときには、小さな檻に閉じ込められていた。そこは小さな家の形をした檻だった。

その家の中は、怒りや憎しみ、悲しみや嫉妬というべったりまとわりつき、内面から精神や魂をむしばむ毒のようなエネルギーが渦巻いていた。

彼女が生まれるずっと前から、この家はおかしかった。

幼い彼女には、家のいたるところに黒々した影に見えた。

祖母や父はいつも黒い憎悪の火柱を挙げ、あたりに黒い影を空き散らしていた。
そう、彼女の家族は人ではなかった、人から堕ちた存在だった。


<祖母の悲しみと憎しみ>
祖母は戦争の前に夫を亡くし、戦火で家財をすべて失ってからも女手ひとつで6人の子供と姑を養っていた。
工場で働いていた時、機械に挟まれ右手の指を3本失った。手が不自由なのでできる仕事が限られていた。

佐賀のがばい婆さんのように、鉄くずを拾って日銭を作っていた。
鉄くずが集まらない日は、日が沈んだ後も月明かりのもとで鉄くずを探し回った。

そんな生活だったので、6人の兄弟のうち2人が病気で早逝した。
子供をなくした母親の心の痛み、苦しみが彼女の心を壊してしまった。

悲しみを抱えながら、生きるために鉄くずを拾う日々だった。

子供を奪った運命を呪った。戦争が憎かった、世界のすべてが憎かった。

そうしなければ生きていけなかった。

終戦を迎えた後も、貧困との戦いが続いた。

 


<義祖父の悲しみ>
ちょうどそのころ、終戦間近の満州の吉林では義祖父がロシア兵の捕虜として、集団でシベリアへ連行されかけていた。
義祖父は馬術に優れ軍馬の管理が上手だったので、ロシア兵に拘束されてからも馬の管理を任されていた。

同じくロシア兵に拘束された仲間のうち、脱走を試みたり反抗したものはひどい目にあっていた。
ろくな食事も与えられず、ひたすらシベリアへ向かって移動させられていた。

ロシアの捕虜となって北へ向かったいたある日、義祖父の仲間たちが大規模な集団で脱走を試みた。
銃声が鳴り響き、ところどころに人や馬が倒れていた。
義祖父は「逃げろ!!」という仲間の声を聴くと、反射的に馬にまたがり森へ向かって走り出した。
あたりは銃弾がとびかっている。しかし、馬にまたがった義祖父は疾風のように軽やかに銃弾を交わし、目的地の森へ向かった。

銃声が遠くなって、追手が見えなくなると馬から降りた。
義祖父は目を見張った。

殻を運んでくれた馬は被弾しており、腹からおびただしい血を流していた。
馬は余力を使い果たし、義祖父をロシア兵から逃がしてくれた。

馬はドッと倒れこみ、そのまま静かに息を引き取った。

義祖父は馬の亡骸を茂みに隠して、涙を流しながら手を合わせ続けた。
彼は何時間もそうしていた。
そして、馬が運んでくれた森の中で、仲間や馬の供養をしながら3年潜伏した。

吉林の森で逃避生活をしたのち、生き残った仲間と協力して
引き上げ船に乗って日本へ戻ることになった。
彼は生きていること、彼を生かすため犠牲になった多くの命について

感謝を忘れることがなかった。


<父の持つ感情のねじれ>

私の父が物心ついたときには、彼の実父(私の祖父)は病気でこの世を去っていた。
父は自分の父親のことをあまり覚えていない。
6人兄弟の2番目だったが、上が姉なので長男だった。

下に妹が2人弟が1人いた。しかし、妹の1人と弟は小さなうちに病気でこの世を去ってしまった。

彼は家計を一人で支える母親を助けたいと思い、小学校を卒業すると住み込みで働ける会社へ就職する道を選んだ。
大人たちに交じって働くことはとても大変だった、毎日怒鳴られ、言葉だけでなくこぶしや膝蹴りが飛んでくることもあった。

でも彼は耐えた「母を助けたい、母の力になりたい、母に褒められたい」その思いだけで辛い仕事を続けていた。
彼が職場で働き始め家に仕送りをし始めたとき、大きな変化が起きた。

満州から日本へ引き揚げ、地元で奉仕活動をしていた義祖父と祖母が出会うことになる。その後、祖母は再婚をした。

そして、翌年には弟が生まれた。
父が住み込みで働いている間に家族は大きく変化をした。
母を支え、母に褒められようと努力して家族の大黒柱になろうとしていた父。
10代の彼は、母親の再婚や出産という出来事をきっかけに裏切られたように感じた。
母親を思う思慕の念は、激しい怒りと憎悪へと変化した。

住み込み先から、家に帰ると見知らぬ義祖父が家族の輪の中にいて、彼によく似た小さな赤ん坊までいた。

「ここはもう、自分の家ではない」当時10代だった父のこころは激しい慟哭した。
義祖父に反抗したが、体格の良い義祖父には到底かなわなかった。

やり場のない怒りを抱えながら、父は目的を失っていた。
その後、素行が荒れた彼は勤め先で暴力で問題を起こし、あっけなく職と住処を失った。
その後もさまざまな職を転々とするが、どれも泣かく続かなかった。
あちこちで問題を起こす父を心配して、祖母と義祖父の二人が父を家に戻るように説得した。

父はしぶしぶ家に戻ることになるが、自分を捨てた祖母を恨み、自分の居場所を奪った義祖父を憎んでいた。
そして、家族の注目を集めすくすく育つ、異父弟に嫉妬していた。

 

 

<祖母と父から生まれる憎しみの重苦しさ>

祖父と母は普通の人だったが、憎しみや怒りに同化した祖母と父の重苦しい情念の渦~子供たちを助けることはできなかった。

黒い火柱を上げる憎悪のエネルギーはピリピリとしびれるような嫌な空気を作り、とてつもない恐怖を彼女に与えていた。
恐怖は痛みを伴うことがある。小さな彼女は、異様な緊張感に恐れを感じた。胸が張り裂けるような痛みに耐えながら、逃げる場所なくこの小さな檻の中で成長をしていくことになった。

それは彼女が中学生になったころ、それまで感じていた黒い影の恐怖が、人の形に見えるようになった。その影は夜になると彼女の体を魔術にかけて動けなくして嘲笑っていた。

夜になると黑影が目を光らせ、彼女を見張っているのだ。

 

 


<憎しみが生み出す黒い影>
こんなことを言うと、あなたは彼女のことを頭がおかしい人だって思うかもしれません。

しかし、あなたも彼女と同じように瘴気に満ちた狭い小さな家で過ごしてみたら、きっと同じような体験をされるでしょう。

彼女はその時から、”お守り刀”として台所から小さめの果物ナイフを一つ調達して、タオルにくるんで枕の下に忍ばせるようになった。恐怖におびえながらナイフを包んだタオルを握りしめ眠りについた。

本来なら銀製のナイフが好ましいところだが、彼女の家は貧しかったので、銀の食器などは置いていなかった。

 

ある夜、彼女が眠りにつこうとしていると、いつも通り黒い影がやってきた。
そして、キーンを言う嫌な音を出し彼女の頭を混乱させた。

彼女は音のせいでパニック状態になった。嫌な汗が額に浮かんで流れた。
黒い影はどんどん迫ってくる。
空気が薄くなり呼吸がしずらくなった。両親を起こして助けを呼ぼうとしたが、すでに声が出なくなっていた。
体もしびれて手も足も指先も思うように動かせない。
黒い影の接近で、体にとてつもない重力がかかっているのを感じた。このままだと黒い影に押しつぶされてしまう。

そう感じた彼女は最後の力を振り絞り、枕の下に隠していた果物ナイフを取り出した。

その時、果物ナイフの小さな刃先が月の光を反射しほんの一瞬キラリと光った。

ほんの小さな一瞬の光だった、しかしそれで十分だった。彼女を押しつぶそうとしていた黒い影は見る見るうちに小さく縮まっていく。
黒い影はこれまでの力を失ったようで、弱々しく逃げるように部屋の隅の壁紙のしみの中へと逃げていった。

 

黒い影はこの檻の監視者なので、この出来事の後も彼女を監視し、時々彼女に危害を及ぼすような出来事を起こした。
しかし、お守り刀である果物ナイフによって返り討ちに会い、その都度浄化された。

 

 元ネタ

kousei117.blogspot.com